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借金問題に困ったら

コラム

2021年02月19日

はじめに

 個人が複数の銀行や金融機関から貸付を受けたり、複数のクレジットカードの貸付枠を利用したキャッシングにより貸付を受けた後に、その返済が困難に陥った状況を多重債務状態といいます。

 多重債務状態に陥ってしまう理由は様々ですが、多重債務者のもとには、債権者から返済催告の電話や手紙が日々送られてくることになり、日常生活すら立ち行かなくなってしまいます。

 このような多重債務の問題に対しては、①任意整理、②破産申立、③個人再生といった手段を取ることより、多重債務状態が改善されることがあります。

 

解決方法

①任意整理とは、債権者である金融機関やクレジットカード会社と弁護士が返済期限や金利等の見直しの交渉をおこない、双方が合意した条件で債務者が貸付金を債権者に返済していくという方法です。

この手続は、裁判所を利用しないため、費用が多額にならないといったメリットがあります。また、任意整理する対象の債権者を債務者自身が選択して交渉を行うことができます。他方デメリットとして、任意整理はあくまでも借金減額の交渉であるため、債務の返済から免れられるわけではありません。また、任意整理が不適当な債務もあります。たとえば,自動車ローンを組んでいる場合に、その債務を任意整理の対象にしてしまうと車に所有権留保が付されていれば車が引き揚げられてしまいます。

 

②破産申立とは、破産申立時に債務者が有する全財産を売却し、その財産で金融機関等への返済にあて,返済後もなお残ってしまった債務の支払の免除を求める手続です。

破産申立のメリットは、破産手続の後に裁判所から出される免責許可決定が下りれば、たとえ残債務が残っていたとしても、その支払いを免れることができる点にあります。これにより新たな気持ちで生活を再スタートさせることができます。他方デメリットとして、破産手続きは裁判所に申立てを行うため費用が掛かります。また、債務者は財産を売却することになるので,自由財産の拡張が認められなければ車等も失うことになります。さらに、破産申立を行うと一部の資格制限を受けるため特定の職業に就業できなくなります。そして,官報に破産申立をしたことが掲載されます。

破産申立に関しては、申立てを行うと住民票や戸籍にその旨が記載されたり、職場の方に知られたりするのではないか、親が破産すれば将来、お子様の進路に影響があるのではないかと思われる方がいらっしゃいます。この点について、まず住民票や戸籍に破産したことが記載されることはありません。また、自ら職場の方に破産申立を行っていることを伝えなければ基本的には知られることはありませんし,官報を日々確認している人でなければ破産者の情報を得ることは基本的にはありません。そして、親が破産したからといってお子様の進路に影響が出ることもありません。

 

③個人再生は、破産手続によるデメリットを回避しながら、債務の減額をおこない残債務の返済を行っていく手続きです。

個人再生のメリットは、住宅ローンを組んでいる債務者が住宅を売却せずに債務整理を行うことができる点です。また、破産申立により職業上の資格を失ってしまう人がその資格を失わずに債務整理を行うことができます。他方デメリットとしては、個人再生手続きを利用するには,一定の継続した収入を得ていることが必要となります。また,個人再生は,破産申立とは異なり再生計画に基づきながら残債務の返済が必要となります。そして,個人再生手続は裁判所を通じて行う手続であるため、再生計画の提出を求められるなど、費用・労力がかかります。

まとめ

多重債務者状態に陥っていても、その状況を改善する手続が社会には用意されています。それらの手続を適切に利用できれば債務の悩みから解放され、人生の再スタートをきることができます。どの手続が適切かは、債務の状況によって異なりますので、まずは弁護士にご相談ください。債務相談では相談費用等を援助する法テラスのご利用も可能です。

 

 

執筆者:染谷俊紀

債権者から請求書が来て不安で夜も眠れないといったことがあるかと思います。当事務所でも多くのご相談を受けておりますので、一人で悩まずお気軽にご相談ください。