離婚事件
コラム2023年07月15日
はじめに
離婚の方法として、協議離婚と調停離婚と裁判離婚があります。
協議離婚とは、両当事者が話し合いによって離婚することを合意し、その旨を役所に届け出ることにより成立するものです。
裁判離婚とは、法律が定めている離婚原因がある場合のみ認められ、「両当事者は離婚する」というような判決が確定することによって成立するものです。もっとも、離婚の訴えについては、必ず家事調停を経なければいけないという調停前置主義が採用されているため、実務では、調停離婚→裁判離婚という流れになります。
そのため、協議離婚が難しいという場合には、まず、調停の場で、離婚を成立させることができないかを話し合い、それでも話し合いがまとまらない場合には、裁判になります。裁判では、ドラマでみるような尋問が行われることが多く、様々な手段で互いの主張をぶつけ合うことになります。
このように協議離婚が難しいとなると、離婚が成立するまで長期戦になることが多いです。一般的には、長期戦になることにより費用がかさむだけではなく、精神的な負担も大きくなるとされています。しかしながら、長期戦になりたくないという理由で、必要以上に譲歩して、ご自身にとって一方的に不利になるような条件で協議離婚をした場合には、のちのちの生活に大きな影響を与えることになりかねません。
そのため、離婚のことについて少しでも疑問があれば、どのような方法で離婚をするのがベストなのかも含めて、今一度近くの弁護士に相談してみるのがいいかもしれません。
以下で、離婚の際に、問題になることが多い事項について、わかりやすくご説明していきたいと思います。
親権
協議離婚の場合であっても、裁判離婚であっても、夫婦の間に未成年の子がいる場合には、父母のどちらが親権者となるか決めなければなりません。婚姻中は、父母の両方が一緒に親権を行使することになっていますが、離婚する場合には、父母のどちらか一方の単独親権になるのです。
協議離婚の場合には、未成年の子がいるにもかかわらず親権者を記載しない離婚届は役所に受け取ってもらえません。親権者を指定することは、協議離婚の成立要件になっているのです。
裁判離婚では、調停なら調停の場で、裁判なら裁判の場で、父母のどちらか一方を親権者にすることを決めます。
【親権者とは?】
親権者のイメージはつきやすいかと思いますが、民法では、親権は、子を監護教育し、子の財産を管理し、子に代わって法律行為をする親の義務と権利をいうとされています。
【親権者の指定の判断基準】
民法には、親権者指定の判断基準に関する具体的な定めはありませんが、過去の裁判例によると、概ね以下のような基準に留意し判断されているようです。
①これまで子の世話をしてきた中心人物は誰か、その人物の養育実績に問題はないか
①の基準は、実務では主たる監護者の基準といいますが、この基準は、およそ以下のように検討されるといわれています。
まず、子が産まれてからこれまでの子の世話をしてきた中心人物が誰なのかを認定します。
次に、上記検討で認定された「子の世話についての中心人物」のこれまでの養育態様や養育実績に、特に問題があるかを検討し、特に問題がないのであれば、「子の世話についての中心人物」が親権者となります。
②子はどんな意思を有しているのか
年齢の高い子について、父母のどちらが親権者として相応しいかについては、子の希望を把握した上、特に問題のない限り、子の意思を尊重して決められることになっています。具体的には、概ね10歳前後以上の子については(個人差はありますが)、意見を言語化し表明できるようになってくると考えられ、子が表明した意思・意向を尊重する判断がなされているようです。特に、15歳以上の子については、裁判所は、子の親権者を指定するにあたり、その希望を必ず聴かなければならないものとされています。
子の意思は、家裁調査官による子の意向調査によって把握されることになります。子の意向調査において、心理学、社会学等の行動科学の専門職である家裁調査官は、子と面談し、子が両親の紛争をどのように受け止め、今後の生活についてどのような希望を持っているかといった点に関する希望を聴取します。その際には、面談時の表情や態度、子の発達段階、生活状況、これまでの親子関係等の周辺事情も踏まえて、子の意思の内容、子の本心からでてきた希望なのかを分析評価します。
【まとめ】
親権者がどちらになるかについて争いがある場合や、不安を抱えている方は、家事事件を多く扱っている弁護士に相談してみてください。不安に感じておられるご事情をお話すれば、裁判所が親権者を判断することになった場合のおよその見通しを聴くことができるかと思います。
なお、法制審議会では、家族法制の見直しに関して議論が進められており、父母が離婚した場合において父母双方を親権者とすることの可否、いわゆる「共同親権」の可否について議論されています。そのため、今後の動向が注視されます。
財産分与
次は、離婚の際に問題になることが多い事項のうち、財産分与について大まかなご説明をしていきたいと思います。
【財産分与とは・・・】
財産分与とは、離婚に際し、夫婦の財産の清算等のために一方が他方に対して財産を分与することをいいます。
民法には、離婚に際し、夫婦の一方が他方に対して財産の分与を請求することができると定めています。
【財産分与の対象】
夫婦の財産には次の3種類があるといわれています。
①特有財産:名実ともに一方当事者が所有する財産(婚姻前から所有していた財産や相続した財産など、夫婦の協力とは無関係の原因により一方当事者が取得した財産のことをさします。)
②共有財産:名実ともに夫婦の共有に属する財産(例えば、夫婦共有名義の不動産などがあげられます。)
③実質的共有財産:名義は一方に属するが夫婦が協力して取得した財産(例えば、婚姻期間中に購入した妻名義の車などがあげられます。)
財産分与の対象になるのは、②共有財産と③実質的共有財産で、①特有財産は原則として対象になりません。
【財産分与の基準時】
財産分与は、「婚姻中に夫婦で協力して形成した財産」を対象とするので、婚姻関係が継続していても、夫婦が別居するなど夫婦の協力関係が終了したと認められる場合は、原則として、その終了した時点(別居開始時)での財産が分与の対象とされます。なお、これは財産分与の対象「範囲」の基準時であって、財産を「価額評価」する際の基準時は、裁判時とされています。
【財産分与の割合】
財産分与の割合については、現在では、主婦(主夫)であると共働きであるとを問わず、財産形成への貢献度を平等とみなして、財産分与割合を「原則として2分の1」とする運用がほぼ定着しています(2分の1ルール)。
【財産分与請求権が発生するか?】
清算的財産分与は、財産分与の対象となる不動産や預貯金等のプラスの財産がある場合には、請求することができますが、プラスの財産がなく、夫婦が婚姻生活を営むために負った債務しかない場合には、清算すべき対象財産がないとして財産分与請求権をすることはできないとされています。
例えば、夫婦が婚姻後、形成した財産のうち、プラスの財産を全部加算し、これらから債務などのマイナスの財産を引いた結果がプラスになれば、それを2分の1ルールで算定するという原則で調整されることになります。
【財産分与の請求は離婚後2年以内?】
財産分与について、当事者間で話し合いがまとまらないとき、又は、そもそも話し合いをすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して話し合いに代わる処分を請求することができます。ただし、この請求は離婚後2年以内に行う必要があり、同期間を経過してしまうと、財産分与請求権は消滅してしまうのでご注意ください。
【まとめ】
以上、財産分与においてよく問題とされる事項について、実務上の原則ルールをお伝えしました。
上記のルールはあくまでも原則ルールであり、裁判所がそのときどきに存在する個別の事情にも配慮した結果、上記のルールが修正されることはあります。
すでにお伝えしたように、財産分与が請求できるのは離婚から2年以内であるので、財産分与をせずに離婚を先行させた場合で、離婚後に財産分与を請求したいと考えている方はお早めに近くの弁護士にご相談ください。
不貞行為
最後に、いわゆる不倫の問題について大まかにご説明していきたいと思います。
【不貞行為とは・・・】
一般的には「不倫」と呼ばれる行為は、法律の世界では、「不貞行為」と呼ばれています。
不貞行為とは、婚姻している者が婚姻外の異性と自由な意思のもとに性的関係を結ぶことをいいます。
性的関係という文言が入っていることから明らかなように、ただ、既婚者が妻または夫以外の人と親しくしていた、手を繋いでいたというような事情があっても、それ自体をもって不貞行為とすることはできません。
【不貞行為と慰謝料】
不貞行為は、離婚事由となるだけではなく、婚姻共同生活の平和の維持という権利利益を侵害したことになります。したがって、不貞行為をした夫または妻は、不法行為に基づく損害賠償義務が発生します。ここでの損害は、精神的な苦痛とされることが多いため、不貞行為をされた妻または夫は、損害賠償として慰謝料を請求することになります。
この場合、不貞行為の相手方も、不貞行為をした夫または妻と共同して不法行為をしたことになるので、同じく損害賠償義務を負うことになります。
【不貞行為慰謝料の相場】
不貞行為慰謝料の相場への関心は高いかと思いますが、その額は、事案によって様々であり、相場はあってないようなものです。
そのため、慰謝料の算定の際に考慮される要素をご説明いたしますと・・・
婚姻期間、婚姻関係破綻の有無、不貞行為の期間や回数、未成年の子の有無などがあります。
たとえば、婚姻期間が1年の夫婦の間に不貞行為の問題が生じた場合よりも、婚姻期間が10数年の夫婦の間に不貞行為の問題が生じた場合の方が、一般に、夫婦間の婚姻共同生活の平和の維持への侵害の程度が大きいとされ、慰謝料も増額されることになります。
【まとめ】
以上、不貞行為と慰謝料というテーマでお伝えしましたが、このようなトラブルに見舞われた方はどうしていいか分からず、なかなか冷静ではいられないかもしれません。こんな証拠があるけど、どんなことができるのかなどお近くの弁護士に相談し、まずは、ご自分が置かれている状況を客観視できるよう専門家に話をしてみるといいかもしれません。
このコラムが少しでも、みなさまのご参考になれば幸いです。
離婚にかかわることについては特に感情的になりやすく、そのことで頭がいっぱいになる方が多いかと思います。ご自身で悩みを抱えるよりも、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。